天才になるには〜生まれか育ちかを超えて〜
従来の天才は「生まれか育ちか」論争は最新の研究の前には無意味である。
その真髄は「生まれ×育ち」である。
遺伝子と環境・行動は相互に影響を与え合う相互作用的なモデルなのである。
本書では次のたとえを使う。
「遺伝子は固定したモノではなく、2万個以上のボリュームのつまみだといえる。巨大なコントロールボードである。」
生まれつきコントロールボードの配置が決まっているのはたしかだが、どの要素のスイッチを入れ、ボリュームを上げ下げするかは、「栄養、環境状況、行動」などによって変わるのだ。
具体的には遺伝子からRNA(伝達物質)が情報を運びタンパク質の生成を指示するが、
RNAは環境の要因(神経刺激、栄養、行動・感情、ホルモン、環境刺激)によって活性化したり不活性化したりしている。生まれたあとにも遺伝子の活動はダイナミックに変化するのだ。
そこで才能は、ニーチェの次の言葉に集約される。
「偉大な芸術家と思想家は一人残らずたいへんな働き者であって、創作ばかりでなく、捨て、ふるいわけ、つくりかえ、整えることにも根気よくあたる。」
引用された研究によると、訓練によって脳の対応する分野が成長すること、筋肉のつきかたが変わることなどが証明されている。
だが、意図は遺伝子の力を軽く見るのもでもない。
かといって誰でも天才的な能力をあらゆる領域で発揮できるというものでもない。
「才能はモノではなくプロセスである」という趣旨だ。
複雑に絡み合った要素が相互作用し続けて、才能を育む。
誰もが天才の「種」は内に宿しているとはいえるものの、
それがいつ現れるか、生涯のうちに発揮されるかはわからないのである。
しかし、そのための条件!(なんとこれだけやっても天才になれるかは保障されない。しかし、天才の誰もがクリアしていることは間違いないのだ。)はいくつかわかっている。
動機をみつける
自分を厳しく批評する
ダークサイド(後悔・責任転嫁)に注意する
自分の限界を見極めた上で、それを無視する
満足を先に延ばし、充足に抗う
ヒーローを持つ
指導者を見つける
さらに
・特定領域への1万時間の集中的訓練(1日3時間を10年間真剣に、しかもこれは条件にすぎない)
・資質、メンタリティ、戦略、忍耐、時間の正しい組み合わせ(試行錯誤も含まれる=一般解はない)
既存の「天分の才能」理論より「根性と努力」理論よりはるかに説得力があると、
私は思ったがみなさんはどうだろう。どの今までの天才についての説明より複雑で革新的ながら、才能に関するサイクルをまわし続けるというのは常識的に理解できるプロセスだ。
今まで単純な天才論がはびこってきたのは、自分に対する失望が怖いからではないだろうか。
飽くなき全方位への努力。しかも思考判断も続ける。探求し続ける。ゴールに達するかはわからない。
こんな人生を歩みたい人は少ないだろう。だから「生まれつき才能がない」とあきらめたいがために単純な天才論を信じてきたと言える。
この本は200ページを根拠に割き、それを除く主張文中にも実例や研究例をたくさん挙げている。根拠を確かめることも容易だ。
天才になることは、常識よりはるかに可能性があり、しかしそのプロセスもはるかに厳しい。
やりたいか、やりたくないか、それだけを我々は真剣に人生に問われている。

- 作者: デイヴィッドシェンク,David Shenk,中島由華
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/09/01
- メディア: 単行本
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・そこまで一つのことを実現するのも(うまれつきの)才能じゃない?
→猫のクローンの例
遺伝子配列がまったく同じネコ2匹は観察上、逆の性格が見られた。好奇心旺盛な性格に対し大人しい性格。加えてなんと毛色が違った。三毛と茶色である。
興味や性質は遺伝子のみで決定されない。
・環境が全部きめちゃうんじゃないの?
たしかに本書では環境は常識以上に変えられないものだと認めている。
食べ物や文化、家族、交友関係はなかなか変えられない。
しかし、選択できないことはない。敏感になることが選択に違いを生むのは確かだ。